覚えていない

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えみぽんと呼称される女は吉田の顔をじっと眺めた。吉田は軽く微笑みながら自分の名前を名乗った。 「ぼく、吉田だけど…… 覚えてるかな?」 吉田はそんなことを言うが、目の前にいる「えみぽん」が誰だったのかを覚えてない。クラスの仕切り屋の女子だったのか、はたまたその腰巾着ポジションの所だったのか。いくら考えても顔も名前も思い倦ねがないのであった。 「えっと、あたし、本田恵美(ほんだ えみ)だけど…… うーん」 吉田は更に困惑した。本田恵美と言う名前を聞いても思い出せないのだ。顔と名前が一致しない。むしろ、高校時代にそんな女子がいた覚えはないと言う感想しか持てないのであった。 吉田の高校時代の女子との関係は学校行事の際に少し話すぐらいであった。そんな程度の付き合いなら思い出せなくて当然、吉田は本田恵美に見切りを着けた。 「ごめんね、高校の時に比べて綺麗になり過ぎてて誰かわかんなかったわ」 「はぁ、そうですか」 「じゃ、同窓会の方楽しんでね」 吉田が去った後、竹本奏と本田恵美はお互いに首を傾げていた。 「ねえ、吉田くんなんてウチのクラスにいたっけ?」 「ちょっと、覚えてないかな?」 「あっちもあたしら覚えてないみたいだったし、まぁいいんじゃない?」 「そうね」
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