アオイちゃんとソラくん

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「言うほど格好良くもないんですねどね。ただ彼女の前で無様見せらんないってだけで」 「いいんじゃないか? 恋人、家族、友人。自分の大切な人のために体を張る。俺は好きだぞ」 「ははっ。ありがとうございます」 ちょっぴり男臭い話もこの二人だと様になりすぎて私はどう反応していいか分からなかった。 「いいのよ、好きにやらせておけば。ちょっとアメをぶら下げておけば勝手に頑張ってくれるわよ?」 「ひゃっ。お、王妃さま……?」 「いいえ、アオイちゃん。もっと気楽に呼んで?」 「ふぇっ」 するするっと伸びてきた腕が私をあっという間に抱き寄せてしまう。 少し離れてても美人すぎてまともに見れなかったのに、この至近距離でいたずらっぽく笑顔を見せられて。 ねっ? と軽く私の唇を人差し指で突っつかれて。 そんなことされたら顔が真っ赤になるのも当たり前だと思うの。まともに喋れなくなっちゃっても仕方のないことだと思うの。 「あらあら。本当に可愛いわね、今すぐ娘にしたいわ」 「元々そのつもりであろう?」 「違いますわ、アナタ。私達の思いと二人の気持ちは別。もちろん受け入れてくれたら一番嬉しいですけれど」 「そうだな。焦って早とちりしてはいかんな」 頼りになる大人の人。優しくて包容力があって。 ていうか今まさに大事そうに抱き抱えられてしまってて。 嬉しいやら恥ずかしいやら。顔が真っ赤でプラス涙目とか全然顔を上げられそうになかった。 「いいのよ? 全部見せて。大丈夫、笑ったりなんてしないわ。私にだけ。ね?」 「ちょ、ちょ、ちょーっと。あ、アマレナさん? アオイに何をして」 「あらヤキモチ? ふふっ。イイわね、初々しくって」 「ちがっ──いや、違わないかもですけど。でもその、アオイは俺の」 「俺の?」 「俺のお、お──ああっもぅ。すみません、今はこのくらいで勘弁してください」 俺の、なに? なんて言ってくれるつもりだったのかなぁ、ソラくん。 テンパってるソラくんが見たくなってしまってこっそり覗いてた。 でもさすがと言うか、つまらないと言うか。 王妃様相手でもしっかり一度振り返って冷静に言葉を考えるソラくんなのでした。 「そこははっきりと言い切ってほしかったわねぇ、アオイちゃん」 「うん」 ですです。アマレナお母さん。いやお姉ちゃん? どっちが良いです? どちらもです? もちろんオッケーです。 「甘えん坊な娘だけど、いいの?」 「全然構わないわ。むしろたくさん甘えてちょうだい」 「えへへー」 それじゃぁ遠慮なく、とふかふかなお母さんの体に抱きついた。 えへへ。そしたらね、私も一つお姉ちゃんにお願いがあるの。 ソラくんに頑張ってもらえるようにはどうしたらいいのか。教えて?お姉ちゃん。 「惚れた弱みってやつだ、諦めろ」 「……ですね」 盛り上がる女子二人に何故か肩を落とすソラくんと王様なのでした。 あれ? そういえばメアリーさんは? 「あの子もずっと可愛い女の子を待ち望んでいたのよ。尽くすべき主を求めて、ずーっと」 「ふぇ」 「さて、明日からの予定も決まったことだから、食べましょう。何がいいかしら。甘いものもたくさんあるわよ? ほら、あーん」 にゃ!? 初手ケーキだなんて。あ、あーん。 「うふふ。美味しい?」 「お、おいしーです」 「ふふふ、良かったわぁ」 くすくすとご機嫌な声は私の頭上で途絶えることはなく。はい、膝抱っこは絶対だそうです。 こんなにも可愛がられるなんて、と。 だけど、疑われるよりも、疑うよりも、ずっとずっと良い。 たくさん甘えて、明日からは女を磨くために頑張るの。 ソラくんもきっと強くなると努力してくれることでしょう。
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