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※※※
「諦めろ。ああなっては妻に敵う者などいない」
はぁ、とため息をつく姿に王様だって普通の人間なんだと思った。
亭主関白なんて古すぎますよね。今どきの女性はしたたかですもん。
女には敵わない、なんて言葉の意味を男の子になって初めて理解できた気がした。
「何も取って食われるようなことはないから心配するな」
「そ、そんな心配してませんっ」
「フフッ。それは失礼」
俺の知らないところであの子が大人の階段を登ってしまったら、なんて考えてないですからっ。
「大事に思うことと囲い込むことは全く違うぞ?」
「そんなこと、ないです」
「まあ気にするなと言っても無理だろうがな。ただ何もかも自分が与えられると思っていたら大間違いだからな」
「……はい」
アオイのあれもこれも、初めては全部自分。
なんて浅はかな思いを悟られたのかとすごく恥ずかしくなった。
「大丈夫だ。過ちを認め改める。そしてお前はより一層強くなれる」
「はい、陛下」
「陛下も様もいらん、師匠と呼べ。お前は俺の持てる力全てで鍛えてやる」
「承知しました、師匠」
※※※
「あら? どうやら話がまとまったみたいね」
「ふぇ?」
素敵な女性二人に構われっぱなしでちょっとぼんやりしかけていた頃、男性陣は何やら熱く語っていたらしい。
夢中になれるって良いですよね。残念ながら以前の私はそういう輪を傍から応援する役どころでしたけど。
「時々でいいからちゃんと褒めてあげるのよ。そしたらいくらでも張り切っちゃってくれるから。本当に時々でいいからね」
「う、うん」
ちょっとちやほやしたくらいで本当に大丈夫なのかなぁ。ソラくん、そんな単純な子じゃなかったと思うけど。
「大丈夫よ。あの人と意気投合できるっていうのは同じ部類ってこと。あっ、馬鹿にしているわけじゃないのよ?」
重々承知。アマレナお母さんですもの。
「何だかんだで全部やってのけてしまうんだもの。ねぇ?」
「……ぅん」
彼らが王様王子様だっていうこれ以上ない証拠。
泥臭くたって恰好付かなくったって、最後にはしっかり一番を掴み取ってしまうんだ。
そんなの、ますます好きになるに決まってるじゃん。
「うふふ。それじゃあ私達も負けてられないわね。明日から頑張りましょう」
「あいっ」
もっともっと自分を磨いてソラくんを夢中にさせるの。
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