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憧れと現実。私たちの未来
すっかり打ち解けて、というかもう何もかもお見通しという感じがするかもだけれど、まあそこは国の偉い人とてもすごい人たちだし。
私たちはこの世界のこと、そして将来のことを話してもらった。
まず第一印象はゲームの中のお話みたい、だった。
ソラくん的には異世界転生キター、だって。喜んでるところ悪いけど正直ちょっとひいた。
ソラくんってそういうとこあるよね。夢見がちっていうか。
「ソラお前、ちゃんと戦えるのか?」
「できますっ」
「そんな調子のいいこと言いやがって。実際に魔物と向き合ったら笑ってなんていられねぇぞ?」
「大丈夫です。俺、やりますよ」
「……ったく」
あー、はい。こうなったら聞く耳持たないんでほっといていいですよ。
調子に乗ってるのに何だかんだこなしちゃうのが彼のズルいところなんだよね。ちょっとくらい痛い目見ればいいと思うんだ。
「心配いらないわ。あの人も戦場に中途半端な人間を送り出したりなんてしないもの」
「お母さん」
「それに、アオイちゃんのほうが彼よりうんと強くなっちゃうんだもの。あの天狗鼻をへし折ってあげなさい」
「はいっ」
出来るかな?なんて、お母さんが言ってるんだものやるに決まってるじゃん。
そうだよ、私。せっかくならソラくんに守られてばかりじゃなくて私がソラくんを守ってあげちゃえばいいんだよ。
「貴方達の暮らしていた世界はどうだったかは知らないけれど、こっちでは女の子のほうが適性があるのよ」
「てきせい?」
「そう。魔法のね」
「魔法!」
さすが異世界!って叫んだのはもちろんソラくんです。
まあ私もそれなりにゲームはしてたから正直ワクワクしてます。
「安心しろ、野郎には使えないから」
「はいぃ!?」
「お前にはその身体で勝負してもらう。なぁに心配はいらん。天下無双の大将軍と呼ばれたこの俺が直々に指導してやるんだからな」
「っ。お、お手柔らかにお願いします」
「フッ」
王様、超武闘派。
まあ死なない程度によろしくお願いします。ソラくんは負けず嫌いだからだいじょうぶー。
「実はね、あの人もディメンションゲートを通ってきたのよ」
「ふぇ?」
「遥か彼方で何十もの戦場を生き抜いて来たって。全て勝って世界を一つにまとめあげて、ようやく平和になったと思った頃に呼ばれたの」
ふぇー。私たちなんてまだ何もしてないですよ。
高校生になったばかりのお子様ですけど大丈夫ですか。
「戦争に明け暮れていつの間にか年老いていたけれど、何故か若返ってしまったのよ」
「ほぇ?」
「そう。若く力が漲っていたかつての自分を取り戻してね。崩壊していたこの国を武力で統一しちゃったのよ」
「王様、すごいカッコイイ」
「うふふ。俺がバカ笑いできるくらいに平和な日常を作ってやる。だからこの先ずっと俺の隣で笑っていてくれ。だったかしら?」
「王様、素敵な愛の言葉なの」
王妃様の笑顔が眩しかった。
なれるかな、私たちも。
ずーっとあなたの隣で笑顔でいる。ちゃんとお互いに支え合って、ね。
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