憧れと現実。私たちの未来

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翌朝。異世界に来て2日目の朝。 異世界、ファンタジー。女の子になって、というか生まれ変わって? どうやら魔法が使えるみたいで。 まあ色々と、今まで15年と短いけど生きてきて、昨日ほど濃い一日を過ごした経験はない。 それでも後悔や不安より、これから先の未来への期待とかワクワクのほうが大きいんだ。 「おはようソラくん」 「んん? あぁ、アオイか。おはよう」 目覚めがよろしいようで。 そういえばお泊り会なんていうのも小学生のうちだけだったよね。 ぐんぐんと大きくなるソラちゃんと亀みたいにじわりじわりとしか成長しなかった僕。 「夢じゃあないんだよな」 「ん、なに?」 「夢みたいな話だけど、夢じゃなくて現実だよなって。俺の目にちんちくりんなアオイが映ってる」 「むぅ。なにさー」 こんなじゃなかった。こんなのじゃなかったもん、絶対。 ソラちゃんだったらもっと優しくて全然からかってきたりなんかしなかったもん。 「冗談だって。小さくて可愛くて、腕の中に閉じ込めてしまいたい」 「ひゃぁ。いーやー」 広げられた両腕から全力で逃げた。 体力がないことに定評があった私だけど、不思議とソラくんからは逃げ通せられた。 「はぁはぁ。なぜ、にげる」 「ソラくんだから」 「えっ」 「ソラくんだから悪いもん。いつも凛としてて手を引っ張ってリードしてくれる私の好きな人じゃないもん」 女の子だけど誰よりも男前で頼りになるみんなの憧れの的。向こうの世界に置いてきちゃったのかな。 「ごめん!」 「はぃ?」 「ごめん、マジでごめん。俺、めちゃくちゃ浮かれてた」 「……そだね」 うん、知ってます。調子に乗ってファーストキスもセカンドキスもあっさり奪っていったのは誰ですか。 「ていうかさ、アオイはどうしてそんなに冷静なん?」 「えー」 ごめんって謝っておいてなんで私に振るのさ。 「まあでも、うん。思ってたよりもずっとソラくんが単純だから、私がしっかりしなきゃって思う」 お母さんの影響ももちろんありますよ。 「単純?」 「うん。単純おバカ」 「おバカ……」 男の子なんだなーって。やんちゃ盛りの男の子。 女装王子とかなんとかからかわれてなかったら、本当はこうしたかったのかな、なんて。 「うん、認める。俺はアオイが思っていたよりずっと単純で、アオイが好きで好きでしょうがない馬鹿野郎だ」 「っ」 そんなこと言うなんてバカで卑怯だよ。 「何とでも。アオイのためなら誰よりも強くなれる。男臭すぎるあの国王にだって勝ってみせる」 「べつに勝たなくてもいいけど」 「勝つさ、必ず。アオイを誰にも渡したくない。俺だけのものだからな」 「……やっぱりおバカさんなの」 単純すぎる。だけど、愛おしい人。 「分かった。でも私だって負けないから。覚悟しておいてね?」 「──ッ!?」 身長差が開いたって、どちらかが動けばゼロにできる。 薄っすらと赤い頬に唇を寄せれば火が付いたように真っ赤になっていた。
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