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※※※
「少年、あのちっこい娘のことは良かったのか?」
「彼女なら大丈夫です」
アナタが強制連行するから声をかけられなかったんじゃないですか。
そう言いたいところだけどここは我慢だ。
右も左も知らない若造が気安く口を聞いていい状況ではないだろう。
それに、アオイならきっと大丈夫。
普段はふわふわしているけれど芯の強い子だから。俺だって負けてられない。
「少年は戦ったことはあるのか?」
「いえ、ないです」
「そうか。だが心配するな。俺がみっちり鍛えてやる」
ある程度王様が話してくれていたのだろう、屈強な男は決して笑うことはなかった。
期待されることは嫌いじゃない。それだけ俺を見てくれている人がいるってことだから。
そして何より、俺のことを俺以上に喜んでくれる子がいるから。
「ソラです。未熟者ですがよろしくお願いします」
「おう。俺はバスティンだ。よろしくなソラ!」
※※※
「あのっ、私はアオイって言います。お姉さんは?」
最初から優しくしてくれているけど忘れていたの、自己紹介。
「はい、アオイちゃん。私はライナよ。よろしくね」
「ライナお姉ちゃん。ご指導よろしくお願いします」
「うふふ」
私の魔法の先生。先生だから仲良くしちゃいけないなんて決まりはないよね?
「さてアオイちゃん。私の手をよーく見ててね」
「はいっ」
綺麗な手をじーっと見つめる。
さっそく魔法を披露してくれるのかな。
まるでゲーム、夢の中みたいな話だけど紛れもない現実だから。出来ないなんて言わない、絶対にやってみせる。
「“トーチ”」
「ふわっ。す、すごいの!」
ライナお姉ちゃんの手が何かに包まれるように見えたあと、言葉と共に小さな火が灯っていた。
これが、魔法。
「アオイちゃん、いかがかしら?」
「ステキなの!」
「フフッ」
「お姉ちゃんの手がぽわーってなって、そしたらお姉ちゃんの言葉で火が出てきちゃったの」
「そっ、そうよ、その通り。よく分かったわね」
「ふぇ?」
分かるって、だって普通に見てただけだよ?
「今度はどうかしら」
次にライナお姉ちゃんは手で銃を作った。
逮捕しちゃうぞ?みたいな。こんな綺麗なお姉さんならきっとすぐに捕まっちゃうの。
なんて笑っている場合じゃなくて。
よく見るとその手を組んだ銃に何かが集まっているみたい。さっきとは比べ物にならないくらい大きく、濃い何か。
これからすごいことが起きるんだって体が少し震えた。
「感じるかしら。ファイアショット!」
「っ!」
ゴゥッと大きな音と勢いよく飛んでいく炎。さすがにお城の壁に影響は特にないみたいだけど、目にしたもののスゴさは十分に分かった。
あんなの日本だったら連日ワイドショーで大騒ぎだよ。
魔法って本当にすごい。有り得ないようなことができちゃうの。
それと、ライナお姉ちゃんの手に集まっていた何かがきっと魔力っていうやつなんだね。
「私も、やるの。出来るようになる!」
「もちろんよ。私がアオイちゃんを立派な魔法使いにしてあげるわ!」
「よろしくお願いしますなの!」
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