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「どんどん行くよー!次はウォータ!」
「……もう、次から次へと」
「ほぇ?ライナお姉ちゃん、私ちゃんと出来てるー?」
「出来てるわよ。そりゃもう、文句の付けようがないくらい完璧に」
「ほんと?」
おかしいな。最初のほうはお姉ちゃんもよく出来たねって褒めてくれたのに。
途中からだんだん言葉が少なくなっていって、何か私間違っているのかなって。
張り切って頑張って。でも迷惑かけてしまったりしていたら、そんなのイヤだ。
「大丈夫ですよアオイさん」
「ひゃぁ!?」
ステルスメイド、メアリーさんが助っ人に来てくれた。
不意に耳元で囁かれて飛び上がってしまったのは内緒にしてね。
ビックリすると本当に人間って飛ぶんだと身を持って知りました。
「彼女はアオイさんの才能に嫉妬しているだけです。アオイさんは何も悪くありません」
「それ、ほんとう?」
「当然ですよ。わずか数時間で魔法を使いこなして調子に乗るこんなに可愛い子を誰が悪く言うものですか」
「う、うん」
それって褒めてる?「最高に褒めてます」とわちゃわちゃ頭を撫でられたけど。
そんなに調子に乗ってたかな?
イメージ、想像力で。って本当に火が出せた時の感動と言ったらもう、踊り出したいくらいのものでしたよ。踊りなんて出来ないけど。
うん。すごく調子に乗ってましたごめんなさい。
「そういえばメアリーさんはいつからここにいたの?」
「常にいましたよ」
「ふぇ」
「始めから、アオイさんが一つ魔法を覚える度にぴょこぴょこ飛び跳ねる姿が本当に可愛くて、抱きしめたい衝動を抑えるのに必死でした」
それは、ええと、大変でしたね……?
つまり今は我慢の限界を超えてしまったのかなぁ?ぎゅーぎゅーに抱きしめられているけど、まぁ、イヤじゃないからいっか。
「もっと普通にしてくれていいのに」
「──よろしいのですか?」
「ぇ。う、うんいいよ。メアリーさんのこと、好きだもん」
「はぅっ」
とても良くしてくれているのは知ってるもん。美人で優しくて丁寧で、ちょっと隠密行動が過ぎるのがたまにキズ。
でも、それでこそメアリーさんなのだ。
仕返しに私からもぎゅーっと抱きついた。初めて見たメアリーさんの照れる様子はそりゃぁもうすごく可愛かったです。
「ちょっと私は?お姉ちゃんのこと忘れてない?」
えー?そういう時は待て、でしょ?
なぁんて。忘れるわけないよ魔法のお姉ちゃん。
ちょっと年下の子の出来が良かったくらいでいじけちゃうカワイイ人。
「ん。私、決めたの。ライナお姉ちゃんのことすぐに追い抜かしてみせるの!」
「なっ、なにをぅ!お姉ちゃんだもの、簡単に妹には負けません!」
「えへへ。いつまでも年長者が一番だなんて思ってたら大間違いなのっ」
だからね、宣戦布告してみたの。お姉ちゃんも笑顔で受けてくれた。
お姉ちゃんで先生だけど、いつかは越えないといけない壁。
憧ればかりじゃ、ダメだよねソラくん。私、頑張るよ。
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