憧れと現実。私たちの未来

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「あっ、ソラくんだ」 お昼を済ませて特訓は小休止。メアリーさんに頑張っている様子を覗いてみませんかと言われて二つ返事でやって来ました。 ちなみに私の魔法上達度はライナお姉ちゃんのお墨付き。今日はもうのんびり見学したりして過ごしちゃうの。 やっぱり課題は一番に済ませて、残りの時間を思う存分楽しむのが良いよね。 「よくお見えになりますか?」 「うんっ」 男子訓練場は開放的で見学もできちゃうの。 魔法の練習場は違うのって? そうなの。関係者以外立ち入り禁止。というか男子禁制なのです。 何故かと言うと魔法を上達させる方法が筋力トレーニングとかそういうものとは全然違うから、とだけね。 女の子同士の秘密。覗き見は立派な犯罪なの。 「すごいねぇ。でもちょっと痛そう」 「あれくらいで弱音を吐いていたら男じゃないわよ」 己の身体が武器。殴る蹴るの格闘を見て女の子で良かったと思いました。 ソラくん、大丈夫かなぁ。 見ているだけでこっちも痛くなりそう。だけど心配だし、目は離せない。 「ふわぁ」 思わず呆けた声が出ちゃいました。 えっと、だってね。男の人も魔法が使えるんじゃ?ってくらいに人間離れした動きをしてたから。 物理法則無視してますよね?全然見えないよぅ。 「魔法が使えないと言っても戦う術がないわけじゃないわよ?確か闘気とか言ってたかしら」 「トウキ?」 「闘気。魔力は放出して形を変えるものだけれど、あっちは身に纏う力みたいなのよ」 「ふぇー。すごいねぇ」 オーラとか言うやつ?身体能力強化はファンタジーの基本、だったっけ? さっきまでぜーはーしてたソラくんが笑っているように見えた。 「彼氏クン頑張るわね」 「ふぇ!?」 彼氏って言われてドキリ。そう言われると。 ソラくんは私の彼氏で、私はソラくんの彼女で──  「アオイちゃん、大丈夫?ちょっと暑苦しいかしら?」 「え、あ、ううん。だいじょぶなの」 「まあ男連中しかいないしね。むさ苦しいったらありゃしない」 「う、うん」 メアリーさんから頂いたレモンティーを一口。 うん、ちょっぴり酸っぱさもあるけど甘い。そして冷たくて美味しい。 落ち着いたね、私。ソラくん頑張れ、負けるな。 「大の負けず嫌いだもん。まだまだ終わりじゃないよ」 「へぇ。よくやるわね」 投げ飛ばされてしまったソラくん。 大丈夫だよ、あとで私がすっきり治してあげるの。 ソラくんが負けず嫌いになったのは、性別を理由にからかわれることが一番嫌いだったから。と知っているのは私だけ。 どんなに笑われても強く言い返せない自分が大嫌いだった。 そんな“僕”のことを見捨てずにずっと側にいてくれたのが彼(女)だった。 やっぱり大好きなんだなぁ、って思っちゃうよね。 「ソラくん頑張れー!負けるなー!」 彼なら出来て当たり前みたいに思われているけどそれは大きな間違い。 汗水垂らして泥臭く頑張る姿は王子様に似つかわしくないってみんなが勝手に決めつけているだけ。 貴方はどんな姿でも格好良いから。 だけどね、それは私だけが知っていればいいの。
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