憧れと現実。私たちの未来

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※※※ 「参りました」 「おう。初日にしてはなかなか筋が良いじゃねぇか」 バスティンさんがニカッと笑う。 それでも、彼に一度だって攻撃を当てられなかったことは事実だ。 負けた。見事なまでの完敗だ。 何となくどうにか出来るだろうと自惚れていた自分を殴ってやりたい。 あの子の声援を聞いて盛り上がっていた自分を本当蹴っ飛ばしてやりたい。 「ほら、お迎えが来たみたいだぞ」 「あっ。あのっ、バスティンさん今日はありがとうございました。またよろしくお願いします」 「おう。たくさん食ってしっかり寝ろよ」 「はいっ」 強くなるためには栄養を取ることも大事なんだよな。 「ごめんアオイ、見ててくれたのに情けないとこ見せて」 「んーん。全然そんなことないよ。ソラくんすごく頑張ってたの」 「アオイ……ッ」 すっげぇ良い子。マジ天使。 やられっぱなしでボロボロだった俺を優しく笑顔で迎えてくれるアオイ。 それがもう嬉しくて愛おしくて、一緒に来ていた人達のことも忘れてアオイを抱きしめ── 「ぷぇ。ソラくん、くしゃいの」 「え」 「一生懸命頑張ってたからすごく汚れちゃってるの。まずキレイにすることが先なの」 「……はい」 られなかった。 近寄らないで!と叫ばれるよりはマシ、だったのかな。アオイの笑顔を痛いなんて初めて思いました。 優しく諭されている様をアオイについて来ていた二人は肩を震わせ笑っていた。 「ライナです。アオイちゃんの魔法の先生をさせてもらっています」 「はい。アオイのことよろしくお願いします」 「私は今日はアオイさんに付いていましたがご希望であればソラさんのお側にいますよ?」 「えっ? い、いやいいです、大丈夫です」 「プッ」 こんな美人なメイドさんにお世話してもらえたら、なんて世の男は思うだろうけどそれは絶対に許されない。 大事な彼女を差し置いてだなんて。 慌てて否定したけどライナさんには思いきり笑われてしまった。情けないとこ見せてばっかりだ。 「あれ?ソラくん?」 「ん。いや大丈夫だよ、アオイ」 「んっ」 アオイには見透かされてしまっているようだけど、大丈夫と顔を上げるのは男の意地。 本当の自分なんてこんなもんだよな、と思う。アオイが側にいてくれたから上手く行っていたんだ。 強くならなきゃ。そして感謝の意味も込めてアオイの頭を撫でた。 ──やっぱり可愛いなぁ。 目を細めて少し口元が緩んでいて気持ち俺に寄りかかってくれて。愛おしさが込み上げてくる。 それにさ、マジで良い匂いがするんだこの子。女の子なんでこんなに良い匂いがするんだろうか。 元はそうだったけど自分で自分の匂いなんて分からないし、あの頃のアオイからそんな言葉を聞いたこともないし。 何が言いたいかと言うと、とにかく好き過ぎる。 「アオイ」 「んっ。なぁに?」 「好きだ」 「ふぇ!?」 なぁに?って。小首傾げる仕草とか可愛すぎだろどこで覚えてきたんだよ。 強がっているだけで結構ビビりでヘタレな自分にたいして、芯がしっかりとしててまだ2日というのにみるみる可愛くなっていくアオイ。 本当にすごいのはアオイだ。俺は全然完璧なんかじゃない。 そして、その完璧ではない自分の弱さを受け止めてくれたのがアオイだ。やっぱり敵わないなぁ。 愛しのキミに、たくさんの想いを乗せて口づけを── 「ファイア」 「あっつ!?」 「そこかしこで盛るなよ少年。ハゲ上がらせてやろうか?」 「アオイさん。いざという時は魔法をブチ込んでいいですからね?正当防衛ですから」 「ふぇっ。えっと。う、うんわかったの」 「す、すみませんでしたッ!」 夢のような瞬間だけどこの熱さも全部現実で。その最高の第二の人生が危うく2日で終了するところだった。
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