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それにしても。
「どうしてソラちゃんは笑っていられるの?」
「そりゃぁ、この手の話はたくさん見てきたから?」
でもフィクションじゃん。
僕の呆れ顔にごめんごめんと自然な動作で撫でてくる。
──子供扱いしないでよっ。いやぁ可愛くて、つい。
何度も何度も繰り返すやり取りにもう反論する気力もなくす。
それから、どんな時でも僕の前ではソラちゃんは必ず笑顔を向けてくれるんだ。
「普通に有り得ない話だけど、万が一これが夢じゃなくて現実だとしても」
夢としか思えない。でもさっきまでいつもの朝、いつもの登校風景は紛れもない現実だったと思う。
「アオイと一緒なら乗り越えられるって信じているから、平気。大丈夫、アオイは私が絶対に守るから」
「……ぅん」
いやここは、こんな時くらいはさ。男らしく言わなきゃダメでしょ自分。
そんな僕を見透かすようにぎゅっと強く抱きしめられた。
やっぱり、どう足掻いても僕はソラちゃんよりも格好良くなんてなれないと思うんだ。
「楽しんで行こうよ、アオイ。もしかしたら今までの不満も全部嘘みたいに解決するかもしれないわよ」
「……そだね」
この扉の先には未知の世界、そして新しい人生が待っているのだ。ソラちゃん曰く。
それならいっそのこと僕は。どんなに頑張っても男になりきれない僕は。
自分らしくあるために。そして、この先もずっとソラちゃんの一番でいられるように。
「準備いい?」
「いい、よ」
期待?不安? それでも覚悟は出来た。
自信はある。どんな時でも繋がっているから、離さないからね。
僕が守るなんて頼もしいことは言えない。
だから唯一、決めたこと。
この手は絶対絶対に他の誰にも譲ってあげない。誰にも渡さないんだから!
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