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アオイちゃんとソラくん
勇気を出して一歩踏み出してからどれくらい経っただろうか。
眩い光にしばらく包まれて、あとはただただ何もない真っ白な空間を歩き続けていただけ。
足元も地面がしっかりとあるのかよく分からないけど、ソラちゃんに手を引かれるまま歩き続けた。
不安だらけだけどソラちゃんがいてくれるから大丈夫。
どうしたらそんなに堂々としていられるんだろうね。
「あっ」
「ひゃぁ!? な、なにどしたの」
「ビビり過ぎ。ほら、ようやくゴールみたいよ」
「ふぇ」
ソラちゃんの背中にくっつくようにして前の様子を窺う。
もう男らしくとかそういうのは考えないことにした。
だって頑張っても出来ないものは出来ないもん。
まったく、可愛いんだから。と呆れ半分ソラちゃんは僕を撫でていた。
「さて、行くわよ」
「ぅん。ソラちゃんが一緒だから、へいき」
「ふふっ」
甘えだろうと何だろうと、ソラちゃんが行くのなら僕は絶対について行くよ。
真っ白な空間のその先は──パシャッと何かに足を踏み入れていた。
「ぴゃぁ!?」
「ちょっ、アオイ落ち着いて。大丈夫だから、ただの水だと思うよ」
「ふぇ。ぅー、キモチわるいよぅ」
思い切り水溜りに足を突っ込んでしまって靴も靴下もぐっしょり。
なんだよぅ、いきなり全然親切じゃないじゃないか。
「泉? ちょっとした神聖な場所か何かって感じだね。アオイ、嫌だろうけどこのまま行くよ」
「う、うん」
どういうアレでこうなったのかは分からないけど20cmくらいで浅く広がった水溜りの中心に僕たちはいた。
ソラちゃん曰く僕たちは何かに喚ばれたというのは間違いないみたい。
「ソラちゃん、平気?」
「ん……大丈夫さ。きっと着替えくらいすぐに出来るだろうしね」
「? う、うん」
それもお約束っていうやつなのかも。
やっぱりこの人は僕よりも何倍も男らしくて頼もしいと思うんだ。
「一応言っておくよ、アオイ」
「は、はぃ」
「これから先見たこともない光景、信じられないような出来事がたくさんあるだろうけど、一つだけ守ってほしいことがある」
「う、うん」
いつものようにソラちゃんを見上げて──と思ったらソラちゃんが屈んで僕に目線を合わせてくれた。
見慣れたはずのカッコイイ顔にドキドキと胸が高鳴る。
ううん、違うの。これから先何が起こるんだろうって緊張しているだけだから。
「逃げないで、アオイ。大丈夫。どんな事があろうとも必ずそばにいる。“オレ”がアオイを守るから」
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