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「こんにちは。ようこそおいで下さいました」
「ひゃぁ!?」
「あ、どうも。こんにちは」
泉の空間を抜けた先はどこかのお部屋。それと見知らぬ人がいた。
「ふふふ。色々と不安に思うことがお有りでしょうけど、私どもは貴方達お二人を手厚く歓迎したいと思っているのです」
「それはずいぶんと親切なものですね」
「ディメンションゲート。お二人が今通って来られた場所になりますが、あちらを通してのお客様は初めてではありませんので」
「ふぅん。まあともかくここは信用させてもらいます。右も左も分からないまま闇雲に動いても仕方ないので」
「ありがとうございます。では始めに、あちらからお召し物を好きなように選んでいただけたらと思います。こちらの暮らしに見合うようにと用意させていただいています」
「なるほど、それは有り難い」
それから一言二言交わして女性は部屋をあとにした。
ソラちゃんってばすごく大人っぽい。そして、僕は空気だった。
それでも女性は立ち去る時に優しい笑顔を向けてくれて、照れくさかったけど嬉しかったです。
「良かったなアオイ。すぐに着替えられるぞ」
「う、うん。それは良いんだけれど」
「どうした?」
見上げて思う、ちょっと首が痛いなって。
どんな時でも堂々としているのは僕の前だから?
「えっと、あの、気のせいかなーって思うんだけど、その」
「うん。どうした、言ってごらん?」
「はぅ。ええと、その、ね? ソラちゃん、背ぇ伸びた?」
というか何だかすごく男の子みたい。
えっと、ソラちゃんはすごく格好良くて僕なんかよりずっとずっと男らしくて、ってそういう意味じゃなくて。
「……ああ。気のせいじゃないって言ったらどうする?」
「ふぇ……?」
ゆっくりとソラちゃんが近付いてくる。
その顔はすごく真剣でカッコよくて、でも何故だか僕は後ずさってしまう。
見上げて映るその姿は本当にイケメン、王子様。
気後れするように下がったけれどすぐに壁に当たって動けなくなってしまった。
「本当に可愛いな、アオイ。ずっとこうしたかった」
たぶん気のせいじゃない。僕の知っているソラちゃんはもう少し小さくて、ここまで低い声は聞いたことがなかった。
でも、だけど。
目の前にいるこの格好良い人は紛れもなく僕の大好きなソラちゃんだった。
いつもより開いた身長差。けれどもそれが自然のようにだんだんと差がゼロになる。
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