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「もぉばかばかばかぁ! ソラちゃんなんて、ソラちゃんなんて──!」
「いや本当にごめんな、アオイ。確かに止めるつもりだったんだけどさ。その、あまりにもアオイが可愛くて。な?」
「──バカぁっ!」
ようやく状況が分かり始めてきた僕は顔を真っ赤にしながらソラちゃんに怒っていた。
もうもうもぅっ!
ファーストキスだけじゃなくて、2回、3回も……だよっ!?
しかもあんなに長いキスをするなんて知らなかったんだからっ!
「でも、嫌じゃなかったんだろ?」
「……イヤなわけないじゃん。大好きだもん」
「それなら、ほら。俺もアオイが大好きだ。ちょっと早まってしまったけど、さっきのは俺の真剣な気持ち」
「…………ぅん」
男の子になってもう文句の付けようがないくらい格好良いソラ“くん”。
いつまでも火照ったままの顔を隠すように、“私”も大好きな彼の背中に腕を回した。
目の前にいるのは守ってあげたくなるような小柄で華奢な女の子。
白い肌にぷっくりとした桃色の唇。くりっとした瞳でニコッと笑うと本当に可愛らしい。
背中までさらりと伸びた長い髪。今は無造作にしてあるけど色んなカワイイを見せてくれそう。
年相応にまだまだ成長途上の身体はそれでも女の子らしいフォルムを描いていた。
「よかったぁ。ちゃんと可愛い女の子になれて」
鏡に映る自分の姿にほっとした。
いくら女の子みたいと周りにからかわれても、本当に女の子として生まれていたらみんなは可愛いって言ってくれたのかなって。
らしくない男の子だからカワイイ、からかい甲斐があるだけかもしれないって。
夢にまで見た女の子。ちっちゃくて可愛いとみんなに愛されているような女の子。
「ふっ。自分で言うか」
「むぅ。そういうソラくんだって自分のことカッコイイって思ってるでしょ?」
「ん? まあ、そうだな。だってアオイは俺のことカッコイイって思ってくれてるだろ?」
「……思ってる」
おかしいな、ソラくんってこんなに俺様な人だったっけ?
「フフッ。俺もアオイがすごく可愛いと思っている。だからちゃんと可愛い女の子というのは間違いないな」
「……ぁりがと」
「本当に可愛い。好きだよ」
大きな身体に後ろからぎゅっと抱きしめられた。
鏡に映る愛らしい娘はとうに真っ赤に染まっていて、ソラくんには全てお見通しみたいだった。
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