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「服屋というか衣装部屋というか、だな」
「私たちみたいなことはよくある、って言ってたんだっけ?」
「そうだ。理想が現実になるというか、上手く行き過ぎな気もするが」
低く落ち着いた声も考え込む姿さえも全部カッコ良く見えてしまう。
なんて言うか順応が早いねって言ったら、日頃から飽きずに見てきたからって言うんだもん。胸を張って言うことじゃないと思うんだ。
まあでも、せっかくだから楽しまなきゃもったいないって言うのはその通りかな。
「あの人、メアリーさんって言ってたかな。彼女も嬉しそうだったぞ」
「ふぇ?」
「着飾り甲斐のある美少女だって。どうする? 女物なんて初めてだろうから呼んで来ようか?」
「なっ!? い、いいよだいじょうぶ!自分で出来るもんっ!」
文化祭の出し物みたいなアレは絶対にイヤだから!
「まあもしもの時は俺が手取り足取り教えてやるよ」
「……ぇ?」
ニヤリと笑う俺様男子が私を見下ろしていた。
タキシード、みたいな恰好していつの間に着替えてたの。髪もオラオラ系? 炎みたいにセットしちゃって。
頼りになるし頼りにしてるけど、やっぱりソラくんなんだか調子に乗っているよね?
「ソラくんのヘンタイっ! 着替え終わるまで絶対にそこから動かないでね!」
いつまでも流される女の子じゃないもん!ソラくんはそこでずっと反省していればいいんだ。
「ありがたいけれど、何だか怖いよね」
洋服の種類が色々と、ワンピースにドレスにジーンズやロングスカートとか。色々ありすぎて名称がよく分からなかったりするけど。
まあそれは服屋さんに行っても同じこと。じゃぁ、普通にお店に行けばこれもこんな風に並べられているのかな。
ずらっと並ぶ下着類。周りに誰もいないのに何だか居たたまれなかった。
いやいや気を取り直して。女の子がパンツ一丁なんていけない。あってはならないよ。
下はまあ、とりあえず可愛いと思ったものにしよう。普通の、誰かに見せるわけでもないし、うん。
上がね。付けないわけにはいかないし、というか本当デザインだけなら可愛いって思えるんだけど。
サイズってどのくらい? ホックの付いてないタイプもあるの?
あーうー。聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥。
「はぅぅ。あの、あのね、ソラくん」
「どうした?」
いや近い近い。飛んで来なくても大丈夫だから。
「ええと、その……ちょ、ちょっとだけ手伝ってもらってもいいかな?」
「任せろ」
「ほ、本当に手伝うだけだからね? 変なことしないでよねっ」
「大丈夫だ。俺もアオイのことはすごく大切にしたいと思っているからな」
っ!? こんな時にイケメンな台詞言われても反応に困るだけだからね!?
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