第3夜「拓海」

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第3夜「拓海」

それは、美玲ちゃんも来ない静かな夜だった。 「すいませーん、3人いいですかあ?」 若い男性ばかり3人。少し酔った感じの陽気な 空気が漂っていた。 「はい、大丈夫です。奥のテーブルにどうぞ」 3番目に入ってきた男性が 僕の顔を見るなり、目をまん丸にして固まった。 …?僕の顔に何か付いてるのかな?? これが拓海だった。 飲み会の後の二次会?な場らしかったが、 気がつくと、僕を見つめる拓海の視線に ぶつかりそうになって、 僕は気がつかないフリをするのに 神経を費やすハメになった。 …え〜っと…この人、ノーマルだよね…?(焦) 僕はこの見てくれのせいで 割とゲイに間違われやすい。 その次に間違われるのはビアン、かな。 そのどちらでもないので、 ここは気がつかないフリをするに限る(苦笑) ただ、拓海はゲイではない(おそらく) …となると、僕をどう見てるのかな…?? いずれにしても 気持ちに応えられそうにないし、 余計な期待はさせないのが得策だろう。 …と思ったのに 翌日から拓海1人でシエスタに来るようになった。 拓海という名前をそこで知ることになったが、 話すと、なかなか感じの良い男子で 普通に友達になりたいと思うようになった。 言葉の端々に彼女の存在も感じたし、 (これは弥子のこと、だ) 拓海が僕に好意を持ってくれるのは 友達、ということなのかな?と思っていた。 そんなある日の夕方のこと… いつもより早い時間に拓海がやってきた。 「いらっしゃい。今日は早いね」 「うん」 なんか…元気ないな? この感じだと、彼女と何かあったのかな… ユウのオススメは?と聞かれて、 まだ少し早い時間だけど、アルコールを 出すことにした。 甘いカクテル、カルーアミルク。 なんだか傷ついてる拓海には合う気がした。 「甘い…」 そう言いながらも、美味いな…と思ってくれてる。 拓海の傷心の原因は、 なぜか翌日にわかってしまうのだが、 この日はそっとしておくことに、した。
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