第7夜「ヒカル」

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第7夜「ヒカル」

シエスタにはいろんなお客さんが来る。 男も女もどちらでもない人も 大人も子供も老人もやってくる。 その日限りの出会いももちろんあるし 縁が出来て、友達になったりすることだってある。 そんな中で かなりの強烈な印象を持ったのがヒカルだった。 ヒカルは男子でホストをやっている。 最初の出会いは同伴でかなり年上の女性と共に やってきた時だった。 女性はかなりヒカルにべったりで ヒカルに抱きついたまま、注文した焼きカレーを あ〜ん、とヒカルの口に運んでいた。 女性がトイレに立った時、 ヒカルは突然席を立ってカウンターにやってきた。 「ねえ…君」 「はい。ご注文でしょうか?」 「そう。注文なんだけどさ…」 ヒカルはニヤっと笑うと 「ハグはいくら?」 「?ハグ…ですか??」 「そう、ハグ。ちょっと浄化させてくんない?」 そう言うなり、 カウンター越しにヒカルの長い腕が伸びて 僕はいきなり抱きしめられた(!!) あまりに突然で、 男の子に抱きしめてもらうなんて、 もういつぶりかわかんないくらい久々で(笑) どうしていいかわからず 僕はそのまま固まってしまった。 「あ〜〜!!清められたあっ!!!」 ヒカルは僕を抱きしめたまま叫ぶと カウンターに1万円札をポン!と置いた。 「あ、あの…これは…」 「ありがとな。おかげでこの後も なんとか頑張れそうだ。 え〜っと…君は…彼?それとも彼女?」 「えっと…両方、です…」 「気に入った!」 ヒカルはパチンとウインクすると、 僕の名札を見て、 「僕はヒカル。またな、ユウ」 と言って笑って席に戻っていった。 ハグでもらった1万円をさすがにもらうわけには いかないから、後日1人でやってきたヒカルに 返そうとしたら、なぜか更に気に入られて 「そのお金から飲み代を引いてよ」と プリペイドカードのような感じになった(笑) ヒカルはガチ男子だったが バイセクシャルなのだとのちに カミングアウトしてきた。 「だから、どんなパターンでも ユウは抱けるよ。なんなら試してみる?」 「…遠慮しときます」 冗談か本気かわからないことを言っては カラカラと笑うヒカルは ホントは少し寂しがり屋なんじゃないかと思う。 ハグされた時、 ヒカルが僕の肩にアゴをのせて 大きく息を吐くのがわかって、 なんとなくそう思ったんだ。 それはヒカルにはまだ言ってはいない。 言うとまた抱いてやる、とか言いそうだし(笑)
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