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藤村 麻と藤村 絹。
俺より3つ程年下のこの双子は瓜二つな容姿をしており全く区別がつかない。“声が違うじゃない”と言うヤツがいるが、俺には同じに聞こえる。いつもふたり一緒にいるのでどちらがどちらでも問題はないだろう。
門番を任せられている麻と絹は繋いでいない方の手にギラギラと光る包丁を持っているのだが、ふたりの独特な雰囲気が相俟ってかなり恐ろしく感じる。
「麻ちゃん、絹ちゃん! 2人とも可愛いんだからもっと溌剌に、元気に笑えないかな?! お願い!」
波太郎が半泣きで訴えるも、双子はクスクスと声を潜めて笑うだけだ。
前に波太郎は夜にこのふたりを見て小便を漏らしたんだったな。
青ざめる波太郎を押し退けて慎さんが出る。
「花組、任務より只今帰還した。改めるといい」
いつの間にか油さんの槍から外した首入りの風呂敷を藤村姉妹に手渡す。
すると双子は手早く包みをほどいて中を改めると、きゃっきゃっと年相応に声を出して笑う。
「首、首よ! 白粉をはたいて綺麗にしないと!」
「首、首ね! 紅をひいて綺麗にしないと!」
……言ってることはやっぱり怖いけど。
「それじゃあ先へ進ませてもらうことにするかの。荻兄、手伝え」
「はい」
油さんと大文字さん、2人して重厚な扉を押し開ける。重いんだよな、これ。……て、あれ?
抱いた疑問を近くに立つ慎さんに素直に訊ねる。
「慎さん。この扉、油さんと大文字さんとでやっと開くのに……麻と絹は内側からどうやって来たんスかね?」
「え? あ、本当だ! いやっ、怖いこと言わないでよ葬助!」
「お前に言ってねぇだろ。つか、びびり過ぎだし」
「はぁ?! びびってねーしっ!」
「そんな膝をガクガクさせながら言われても信じられるか。……で、慎さんはどう思う?」
波太郎は放っておいて組頭殿を見上げると、聡明な人はふぃっと視線を宙にやってぶっきらぼうに答える。
「さすがにそれは……分からねぇなぁ」
あー、これは触れてはいけない話題だったかぁ。
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