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「……俺は、葬助。楽しく殺して汚く生きてやるさ」
噛み締めるように言うと、男は優しく俺の頭を撫でる。
「偉い偉い。それが正しい選択だ。人ってのは死んじまったら何も出来ねぇが、図太く生きていたら何かいいことがあるもんさ」
頭を往復する手が死んだ母ちゃんを彷彿とさせて目頭が熱くなる。
この先も生きられるという安心感を得ると、急に父ちゃんと母ちゃんを悼む気持ちが溢れてきた。
だけど──。
「なぁお前、もしかして焼けた村の生き残りか? あの乱戦を逃れてきたのか、ますます見所があるな。ああ、ちなみにお前の村に火を放って回ったのは他でもない俺だよ」
「………………………………は?」
唖然と男を見返すも、やっぱりコイツは天女のように柔らかく笑ったままだ。
……俺の村を焼いて、両親を殺したのは目の前の、頭を撫でるこの男。
なんだよ、それ……。そんなのって、ありかよ?
「……っ、あぁあぁあぁあっっ!!」
灰色の凍空に向かって慟哭する。
俺は、生きる。
汚くしぶとく生き抜いて、そしていつかこの男を嬲り殺してやる。
絶対に、絶対に!!
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