咲き誇る花組

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大文字さんが持参していた風呂敷に首を包み、それを油さんの槍に引っかけて歩き出す。 厨を出て薄暗い廊下を進むと、そこはまるで地獄絵図。中途半端に武装した死体がごろごろと転がり、床や壁には血飛沫が飛んでいた。 「結局2階へと続く階段は見つかったのか?」 先頭を行く油さんに訊ねられた大文字さんは肩を竦める。 「それがどこにもないんですよ」 「何じゃ、滝の見当違いか」 発破の準備をしているだろう慎さんは突入前に妙な事を言っていた。 曰く、手に入れたこの屋敷の見取り図には階段が描かれていないのだが、外観を見ると一部が二階建てになっているということだ。 二階建てというのが間違えなのだろうか? だが慎さんが間違う方がない気がする。 「案外隠し扉の類いだったりして」 そんなことを言ってテキトーに横の壁を殴ってみると、壁板がくるくると回転し始めてぎょっとする。 板の向こうには上へと続く階段があった。 「スゴいよ葬助! おれたちがあんなに探して駄目だったのに、刹那に見つけちゃったよ!」 「おや、お手柄だね葬助」 またしても荻鏡兄弟に褒められてしまうのだが、今回ばかりは偶然が過ぎて驚きの方が勝ってしまう。 下にはもう生き残りはいないだろうと全員で階段を登ることになった。 最後尾を歩いていると、耳がふと異音を捉えた。 「何か今変な音しなかったか?」 「音? さぁ、分かんない」 前を行く波太郎は首を傾げるし、油さんと大文字さんも何も言わないのでおそらく俺の気のせいなんだろう。 「納戸かな?」 大文字さんが言う通り階段を上った先はそこそこ広い屋根裏部屋という感じで、古い家具や長持、錆びた武具や農具などが押し込められている。 まぁ隠し扉の先にあったということは本来は密談や隠れ場所として作られたのだろうが。 手分けして人が入り込めそうな隙間を調べる。箪笥の後ろに刀を差し込んだその瞬間──。 ドーンッ!! 大きな音がして足元が揺れた。 ハッとして全員で顔を見合わせる。 「さすがに今のは聞こえたよな? 波太郎」 「う、うん」 というか、何かにおうな。焦げ臭い。それに熱い、汗が吹き出てくる。 「あー。滝口さん、待ちきれなくて発破かけちゃったのかぁ」 「分かる~、滝ってそういう所あるよね! じゃない!! あの糞餓鬼! 何を考えとんじゃ!」 相変わらずな大文字さんと地団駄を踏む油さんを眺めながら階段を登る時に聞いた音は爆発音だったのだと納得した。 「ええい、撤収じゃ撤収!」 「で、でも油さん、」 階段の一番近くにいた波太郎は青い顔をする。 「下、火の海みたいで……炎が階段を伝ってきてますよ~!」 熱気と煙に混ざって死体が焼ける不愉快なにおいがする。鼻につくにおいだがもう慣れた。 「滝ーっ!! 絶対に泣かせる!!」 「あはは、その為には生きてここを出ないとですね」 「“あはは”じゃないよ兄貴!」 炎に巻かれて死ぬだなんて冗談じゃない! 何か手はないかと部屋中を見回していると、が目に入る。
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