第1章/猫又男子のお仕事探し

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「約束の時間になっちまった。話の続きは後だ。付き合え」 「え? あの、バッグ返してください」 「俺の正体を視ておきながら、ただで帰れると思ってんのか?」  くるり。振り返って彼は目を眇めて笑う。 「俺のこと、狐に見えるんだろ?」  その瞳は瞳孔が細長く、黄金色の目をしていた。  睫毛もよく見れば狐の毛並みと同じ色で、カラーリングやコンタクトだとしても精巧すぎる。 「俺の尻尾も耳も見えてるような女、いろんな意味で逃す訳にはいかねえ」  すたすたと歩いていく彼の後ろをついていく。物騒チンピラ狐さんはすたすたと長い脚のコンパスで、さっさときらめき通りの方へと向かっていく。 「あ、あの」 「安心しろ、カバンは返すし飯くらいは奢ってやる」 「こ、これってもしかして……世にいう同伴出勤ってやつですか!?」  がくり、と彼の体が下がる。 「馬鹿! どう見てもリクスーの小娘を同伴に誘う馬鹿がいるわけねえだろ!」  ――『福岡あやかし転職サービス』  代表取締役 篠崎 頼(Rai Shinozaki)。  狐の模様が入った異常にかわいい名刺を渡されて、私はようやく彼が会社社長だと知った。
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