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「ああ、大名の喫茶店がちょうど手伝いを探していたよ。チェーン店じゃないし、店長も京都の人であやかしに理解があるし、店も長いし、ぴったりなんじゃないかな」
川副さんがすっと、瀟洒な喫茶店のチラシを出す。
「マスターも、篠崎社長のことは知っていたよ」
「おっ、他県から来た人に知られてるのは有難ぇな」
「営業時間の後でいいなら、話を聞きたいってさ」
「そこまで話をつけてくれてると助かるよ。恩に着る」
「いやいや~、あやかしが住みやすい街になるのはウチも嬉しいからねぇ」
篠崎さんはタブレットを取り出しさっそく予定を入れている。
あやかしという普通じゃない存在でも、普通の人のように仕事をしたり、就職したりしてるんだなあと思うと不思議な気持ちだ。
――もともと人間に生まれて、普通にうまくやれない私って、なんだかなあ。
私は溜息をそっと飲み込んだ。
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