第1章/猫又男子のお仕事探し

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 篠崎さんによると、あやかしが見える一般人はとても珍しいらしい。  かつてあやかしを使役していた一族、寺社関係者、神職。もしくはあやかし系専門の公務員の一族ならば見える人も珍しくはないらしいのだけど。  ……そういう人たちってやっぱり見えるのね……  私は弊社の主任を思い出す。  いちいちマウントを取りたがるアラサー女性の彼女は以前、髪の毛をかきあげながら、 「あたし、離島の巫女の血をひく末裔なの。だから、たまに視えちゃうのよねぇ」  なんて話をしていた。そういうことってあるんだなー。  主任、フカしてるだけかと思った。いや、主任に本当に見えてるのかも分からないけど。 「まあ歴史を辿れない事は多いしな。女系は特に、繋がりが残らないことも多い」 「でも私、これまであやかしなんて視たことないんですよね……」 「今日いきなりって事なんだな?」 「ええ……たぶん」 「何らかの形で、あんたにかけられていた封印が解けたのかもしれねえな」  彼は顎に手を添え、一人考え込む様子だった。 「きっとたまたまですよ。私、取り立てて目立つこともない普通のOLですし」  見た事あったらそりゃ、篠崎さんの耳と尻尾を見ても黙っていたに決まってる。  だってこんな普通じゃないことに気づいて目立ちたくないし。
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