第1章/猫又男子のお仕事探し

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「申し訳ありません社長! 熱が39度出て、吐き気が止まらないんです!」 「そうか! ゲロの匂いが気になるから、今日は会議室で仕事していいぞ!」 「い、いや、さすがに休ませていただきます!」  そんな嘘をついて強引に会社を休んだ私は無事、福岡の中央部、天神地区にて2件の面接を済ませることに成功した。  ブラック企業に有給申請があるわけがない。  仮病くらい強引にやらないと休めない。  しかし面接の結果は――正直、ちっとも手ごたえがないすっかすかだった。  全てが終わった私は西鉄天神福岡駅の大画面前に背をもたれ、溜息を吐いた。  天神――福岡一の繁華街。きらきらとしたファッションの若者や、背筋の伸びたビジネスパーソンが颯爽と私の前を往来していく。 「むなしい……」  天神ビッグバンという街の再編計画が行われている福岡天神は、天神コアもなければ福ビルもない。幼いころから馴染んでいた花形ビルが、相次いで建て替えで消えている。  ビル街のあちこちが歯抜けのようになっていて、隙間から覗く花曇りの空を高度を落とした飛行機が横切っていく。  景色と同じように、私の心も隙間だらけだ。  ――大学卒業後入社した会社がブラックだった。
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