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私と彼はそのまま地下鉄天神駅のホームへと降りていく。
そこは、帰路に就く老若男女であふれていた。
「あんた、どこまで? 俺は博多」
「私は香椎です」
「んじゃ同じ方向だな」
私も彼も同じ方向に乗るので、一緒に並んで電車を待つ。
相変わらず周りの視線がちらちらと、彼と私の両方に向けられた。
中洲川端駅にも留まる電車なので、もしかしたら同伴出勤に見えてるかもしれない。
うう、目立ちたくない……。
背中を丸めていた私をしばらく見ていた篠崎さんが口を開く。
「姉ちゃん――いや、井ノ中さん」
「はい」
「単刀直入に言う。あんたは巫女の素質があって、更に霊力がだだもれだ」
「だだもれ……」
「あやかしからみりゃあ、素裸(すっぽんぽん)で全身にヘンな薬塗りつけて踊ってるような状態だ」
「さっきから思ってましたけど、それセクハラじゃないんですか?」
「喩えが下手で悪いな。ただ――その霊力を抑えねえと、あんたは延々とあやかしに絡まれ続けるぞ」
「えっ。そんな……」
「俺のところで働かないか?」
「え?」
「転職活動中なんだろ? まあ、見てみてくれ」
彼は私にタブレットの画面を見せる。そこには求人票が一面に表示されていた。
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