第1章/猫又男子のお仕事探し

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「何が」 「私の経歴で……その、あまりにホワイトというか……というか、私の経歴は見なくていいんですか?」 「履歴書入社してからでいいわ」 「雑ですね!?」  あまりにうまい話すぎて困る。  唐突に頭の片隅に、夕方の猫又占い師の姿が浮かぶ。  ――もしかして、私は騙されているのかもしれない?! 「朝の掃除は8時半から。9時朝礼。掃除の時間も賃金はやるから安心しろ」 「あ、あの、まだ会社辞めてなくて」 「転職活動してるっつーことは引継ぎの準備くらいやってんだろ? 来週からでも来れるか」 「え、えええ」 「あのな、井ノ中さん」  彼はずい、と顔を近づける。金の瞳孔が細くなる。 「さっきも言ったがあんたは今、素っ裸でその辺スキップしてるようなもんだ。とにかく、霊力を早くなんとかしたほうがいい」 「ええ、ええと……」 「俺も味見してやりたくて仕方ないのを、社会通念上我慢してやってんだぜ?」  べろり、と唇を舐めて笑う篠崎さん。  蛇に睨まれた蛙。まな板の上の鯉。猫に見つかった鼠。  ――とにかく、そんな言葉が頭に飛来した。 「悪いようにはしねえ。俺んとこに来い」 「え、いや、あ、ああ、あの」
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