第1章/猫又男子のお仕事探し

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 頭がパニックになる。  普通じゃない占い師に、普通じゃないチンピラっぽい狐さん、カワウソの大将。  しかも霊力がどうのとか、突然言われても、困る。 「あ……」 「ブラック御社を辞めにくいってんなら、俺が世話になってる弁護士もいるが――」 「す、すみません!!」  私は思い切り頭を下げる。 「あの、本当にお心遣い嬉しいのですが、あの、やめときます! ……私は、ただの普通の女なので!」 「あ、おい」  そうだ。私は普通に就職したいんだ。  普通に、普通になりたいの――  私は駆け出して地下鉄に飛び乗った。 「駆け込み乗車はおやめください」  大変迷惑そうな車掌さんの声。  私はぺこぺこと頭を下げる。篠崎さんはぽかんとした姿で、ホームに置いていかれていた。  見えなくなってようやく、私はほっと溜息をつく。 「申し訳ないけど……私は普通の就職をしたいから……」
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