67人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「うん、処分しておいたよ」
「えっ!?」
「うちの会社、君がいないと回らないんだよ。君もうちのチームの一員なの。わかってるよね? 社会人として普通だよ」
「あの……」
「代わりの子を雇うまで、辞めないのが普通、普通」
社長はそのまま話を打ち切り、スマートフォンをいじり始めた。
---
「……またかあ……」
私は溜息を吐く。もう一か月以上、退職の相談を握りつぶされている。
休み時間にもコピーをしながら、やっぱりやめられないよねと考える。
空の青さがむなしい。
私も営業職として就職したのだが、なぜか私は一人、営業事務として働くことになった。私以外に女性社員(おーえる)が居ないのが原因だと、なんとなく察している。
しかしなぜか営業成績だけは、しっかり営業専門の人と一緒に計算されていた。
「井ノ中くんは相変わらず営業成績が悪いな! もっと真面目に仕事をやりなさい!」
「事務をしながらでも電話営業なり、業務時間外に営業するなりできるだろう!」
そういわれても。
先ほど私に資料を作らせた主任だが、主任は私が作った資料でそれなりの営業成績を収めてる。だがもちろんそれは主任の業績であり、私の業績にはならない。
その時、電話が鳴る。
受話器を上げると苛立った主任の声が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!