第1章/猫又男子のお仕事探し

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「ちょっとぉ! 井ノ中さん、午後にアポ入れてる吉出巣商事の担当の名前知らない!?」 「お待ちください。ええと……主任のパソコン開いていいですか?」 「いいに決まってるでしょ!? とにかく、さっさとメールで送って!」  ぶつりと一方的に電話が切られる。私は溜息を吐いた。  主任はいつも担当者の連絡先を確認せずに営業に飛び出していく。それで失敗すると営業事務の私がどやされるので、私が把握している限りの情報はいつも揃えて主任に渡していた。けれど、主任が私に教えないまま飛び出して行っている情報は、わかるわけがない。 「個人情報保護の面でも、私が主任の営業先把握しすぎるのもよくないんじゃないかな…」  でも、新卒で入った会社で何が普通で何が普通じゃないのかなんて正直わからない。私は主任のパソコンを開き、すっかり覚えてしまったパスワードでログインして、主任の営業記録を引っ張り出して送信した。 「ふう……もう、休み時間終わりか」  そろそろ社長以下の社員が戻ってくる頃だ。永久電話番の私は外にも行けない。
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