第1章/猫又男子のお仕事探し

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 私は水筒のお茶を飲んで、ふう、と椅子に沈む。  これが一年目なら普通かな、と思って過ごしてきた。  だいたいの取引先の好みは覚えたし、資料作りも覚えた。事前に何を準備すれば気に入られるのかも、取引前後の手紙の送るタイミングもわかってきた。  けれどそれは、ただの私の自己満足だ。実際の業績としては誰も認めてくれない。  営業に同行して学びたいと言っても、事務が何をできると跳ね除けられる。 「やっぱり私……普通の能力すらないのかな……」  転職活動もうまくいかない。会社でもやりがいがない。けれどそれが普通?  それに文句を言ってしまうのは、普通ではないのかな。  昨日仕事を断ってしまったことを、少し後悔していた。
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