第1章/猫又男子のお仕事探し

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 私の中で大濠公園といえば、普段は犬の散歩をする人やジョギングをする人で賑わっている穏やかな憩いの場だ。そんな場所が真っ暗でこんなに閑散としていると、ちょっと怖い。  池の水面に満月が映って揺らめいている。鳥が、ばさばさと木々をざわめかせる。  怖い。  ぼんやりと歩いていると、不意に――ゆら、と景色が変わった気がした。 「え?」  気が付けば。  私の目の前には、先日天神駅前で捕まってしまったあの占い師がいた。 「見つけた」  金に輝く目を光らせ、低くうなるようにつぶやく。  ぱっと見は人の形をとっているものの、ローブのフードを被った頭からは猫耳が飛び出していた。手足の服はびりびりに破れ、中からもふもふの黒猫の手足が覗いている。  猫ちゃんだ~♡可愛い~♡  なんて癒されない! とんでもない!   鋭い爪がぎらりと輝き、私へとじわじわと近寄ってくる。 「あの、猫さん、その……私はただのOLです、美味しくないです……!」  誰か助けてほしい。
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