第1章/猫又男子のお仕事探し

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 毎日終電も終バスも終わったあと、真っ暗な市街地を自転車で帰宅する生活。  休日は大抵社外活動と称して取引先との接待がみっちり入り、ようやく取れた休みは一日気絶するように寝て終わる。  さすがにこれじゃ、『普通』の20代女子の人生は送れない。  気づいた私は少しずつ転職活動に取り組んでいた。  けれど大卒1年目、職務経歴書に書けるものはなし。  簡単に転職できるほど甘くなかった。  学生時代の友達は皆、愚痴をぼやきながらもキラキラ輝きながら過ごしているようだ。そういうごく普通の、ごく当たり前のことができない自分が情けない。 「普通に生きるって、難しいなぁ……」  心の隙間と職歴の隙間。  空の隙間にますますもの悲しくなってきた、そのとき。  露店から占い師が無表情で私に手招きしているのに気づいた。  いかにもな、黒いローブをすっぽりかぶった占い師だ。じっとりとした昏い眼差しをした猫背の若い男性なのが、ちょっと珍しい。 「こんなところに露店出してよかったっけ……?」  大画面から見える位置から、占いの露店を見たのは初めてだ。  なんか変だ……と思ったけれど、通行人は気に留めていないようだ。  占い師は私に向かい、ずっと手招きしている。ちょっと怖い。  でも、無視して離れるだけのエネルギーもなかった。  私はそのままふらふらと吸い込まれるように、露店の椅子に座ってしまっていた。  それが、運の尽きだった。
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