67人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
にじりよってくる彼から後ずさりつつ、辺りをきょろきょろ見回しても当然深夜。誰も助けてくれる気配がない。それに景色もなんだか、モノクロになっているような――
「これは結界。貴方をここで切り刻んで血を啜っても、誰の邪魔もされない……」
「待ってください!」
私は思わず叫ぶ。
「こんなことをしたら……人間に気づかれなくても、お仲間さんとか、あやかしを退治する人たちには見つかっちゃうんじゃないんですか!?」
私は篠崎さんの言葉を思い出す。
あやかしにはあやかしのルールがある。篠崎さんはあやかしの自浄作用として猫さんの不法行為をとがめていた。
きっと人間が気づかなくても、あやかしが私を襲ったとなれば黙っていない誰かがいる。
――ここで止めなければ、猫さんも、あやかしの皆さんもみんな困ることになる。
「どのみち魂を吸わなければ俺は死ぬ。俺はまだ、死にたくない!!」
私があれこれと考えているうちに、猫さんが半狂乱に叫んだ。
「猫さん……!」
襲い掛かる爪。反射的に身を庇うと、ばちんと何かをはじく音がする。私が、何かに守られている。
「あの狐……」
「え?」
最初のコメントを投稿しよう!