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川副さんはあやかしだけど、平和に屋台を開いて頑張って働いていた。
篠崎さんも、他のあやかしの雇用の為に頑張っている様子だった。
彼らは平和に過ごして、あやかしが人間社会から駆逐されないように頑張っている。
私がここで猫さんに負けてしまっては、猫さんが私に危害を加えてしまえば――彼らの『普通』が脅かされてしまう。
――それに。
私は目の前の猫さんを見た。
「ッ……!」
猫さんは私の視線に身構える。
彼も本当は、この社会にいたい人なんじゃないだろうか。
井ノ中楓(わたし)、落ち着いて。
主任がやらかしたクレーム対応で感情的な人の相手は慣れてるじゃない。
「猫さん。私を今襲っても、何の問題の解決にもならないと思いませんか?」
「……少なくとも俺の霊力は満たされる。『此方』にいられる時間が、長くなる」
「でもどうせ、すぐにお腹がすくんでしょう? 私がどんなに美味しい霊力を持っていようとも、1年、10年って、ずっと満たされていられますか?」
「……」
「そんな短い時間の為に、猫さんの猫生棒に振るのはやめましょうよ」
霊力なんて知らない。あやかしなんてわかんない。
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