第1章/猫又男子のお仕事探し

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「私は転職をしたい、普通に生きたいって相談しました。猫さんが真剣な顔をして傾聴してくださっていた時、確かに私の気持ちを汲んでくださっていたように思います。なのに、ブレスレットの話になったとたん……さっきまでの話を聞いていなかったかのように、『出世できる』とか『結婚できる』とか。普通に暮らしたい私の願いと真逆のものが叶うと言いました。だから思ったのです。どこかで貴方は占い師がパワーストーンを売りつける姿を見たことがある。そのやり方で、霊力を吸い取るしかないと思った。だから形だけ見様見真似で真似した……」  表情は固いものの体は素直だ。猫さんの尻尾がふにゃり、と下がる。  やっぱりこの猫さんは悪い人じゃない。ちゃんとした人だ。 「猫さんはとても誠実に傾聴してくださいましたし、凄く信頼できる方だなと思いました。それに記憶力だって、行動力だっておありなんです。形ばかり占い詐欺の振りをして霊力を得ようとするよりも、もっとまっとうに働いて生きたほうが絶対向いてます。……働くのと霊力がどうのは、私はちょっとわかりませんけど」  その時。  私の背後から足音が近づいてきた。
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