第1章/猫又男子のお仕事探し

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 占い開始から10分。  500円でいいと言われた鑑定は、最初は私の話を真剣な顔をして傾聴してくれて、とても嬉しかった。 「いつも深夜まで帰れないですし、残業代は19時までの分しか支給されないんです。私の仕事がもたもたしてるから早く帰れないだけで、新卒の間はこんなの普通だって社長は言うのですが……」 「辛いと思う。俺なら、そんなに長い間起きていられない」  真面目な顔をして頷く占い師さん。占い師といえばアラフォー以上の女性が定番というイメージだけど、彼は25歳くらいに見える男性だった。切れ長の目が鋭くて、ちょっとしたモデルさんにいそうな雰囲気をしている。  こういう人も占い師をするものなんだなあ。と思っていたところで急に彼は話を切り出した。 「悩みがあるなら、この数珠の腕輪を受け取ってほしい」 「え?」  ぽかんとする私に、彼は無言で押し付けようとする。 「え、あ、いやいや……あの、お金ないので、私は…」 「金はいらない。この腕輪で幸せになる。まずは手に取って欲しい」 「は、はあ……」 「転職してどんどん金を稼いで、人脈が広がって独立なんてできたら人間は幸せだろう?」 「いや、私は普通に転職したいだけで……」 「これから短い人生のなかで、今勇気を出して投資しなかったら後悔する」 「あの、私の話……」
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