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思わず引いてしまった私を前に、彼はきょとんとした顔で首をかしげる。
「さすがに人間の男性の姿になれる猫を、実家に連れて帰るのはちょっと……」
「庭先でも構わないが」
「それは、私の倫理観がとがめるというか……」
「しばらくは事務所に住んでいい。その後の事はまたおいおい考えよう」
助け船を出してくれた篠崎さんの言葉に、夜さんは素直に頷いた。
そして私の手を握り、薄く微笑みを浮かべる。
街灯の明かりに照らされるつるりとした顔は、モデルさんのように整って綺麗だと思った。
篠崎さんといい夜さんといい、あやかしの男性は美形がデフォなのだろうか。
「楓殿。一緒に暮らせないのは残念だが、何かあれば必ず俺は力になろう」
「はい。お互いに社会生活頑張りましょうね!」
「……」
「……あの、……手……離さないんですか?」
その瞬間。彼は切れ長の目元に恍惚を浮かべ、ぺろり、と唇を舐めた。
「美味しい……」
そのまま。するりと指が絡められて――
「へ!? あっ!?」
「だだもれ霊力盗み食いすんじゃねえ!!!」
篠崎さんが強引に私たちを引きはがす。
「とにかく一旦解散だ! 車で家まで送ってやるから、さっさと来い!」
私はそのまま篠崎さんのご厚意に甘えて、大濠公園から香椎の自宅まで送ってもらうことになった――
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