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私は理性的に『普通』に角を立てずに生きていきたい。
そう思って直感を無視して生きはじめた途端、私は急に何もできない子になった。
まるで髭を切られた猫のように、目隠しされた人のように、私は手探りでしか動けなくなった。
勉強も進路も恋愛も、直感でピンとこないものを選んで失敗をつづけた。就職だってそうだ。
けれどそれでよかった。
直感に頼らない結果露呈した『無能』が、私の本当の実力なのだから。
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帰りの車の中、私はこんなことをぽつぽつと篠崎さんに打ち明けた。
博多湾の上にゆったり弧を描く都市高速は車がまばらで、エンジン音と走行音が私たちの間を静かに響いていく。
私の膝の上で霊力を充電しながら夜さんは眠っている。
ワイヤレス充電のスマホみたいだなって、ちょっとおかしい。
見下ろす港の夜景は夢のように静かで、綺麗だ。
コンテナが、船が、煌々とした明かりに照らされている。
「昔から浮いた子供でした。だから普通になりたかった。……普通じゃないものを、認めたくなかったんです」
「あんたは社会への順応を間違えているだけだ。直感があっても『普通』でいられるさ」
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