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私は彼の顔を見た。
都市高速の明かりに照らされた篠崎さんは真面目な顔をしていた。
「すべて直感だなんて、周りに言わなくていいことは言わなくていい。それだけだ」
「……はい」
「それに、だ。本当にこれまでの『直感』は全て、あんたの霊力によるものだけか?」
「霊力以外に、何かありますか?」
「無意識で無自覚な洞察力、分析力から生じる『判断』は直感と見分けがつかない。――昔から言う『女のカン』ってやつだってそれだ。言語外のコミュニケーションで男の行動の違和感に気づき、それを指摘する。当たっていたとしてもそりゃあ当てずっぽうな霊感でもなんでもねえ。その気づきを言語化して説明できないときに、単純に『女のカン』と言うだけで。……あんたはそういう洞察力や分析力が鋭い。夜をよく見ていた」
「……そうでしょうか」
「そりゃあ、あんたの場合は『霊力』由来のピンとくるやつもあるだろうけどな。ただ、霊力があろうがなかろうが、あんたは人や現場をよく見て、気づくことが得意なんだと、俺は思うがね」
ウインカーを出して車が車線変更する。香椎浜インターチェンジに、滑らかに車が吸い込まれていく。
「自分の長所は素直に自覚しろよ。転職活動中なんだろ?」
ETCを潜り抜ける直前、篠崎さんは私を見て笑った。
「……ありがとうございます」
心のかたくなになっていたところが、ぽろぽろとほどけていくのを感じた。
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