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後部座席から黒猫――夜さんがのぞき込んできていたのに気づいた。
「あひゃあ」
誰も乗っていないと思い込んでいた私は驚く。私の態度に夜さんも耳をピンと立てて驚く。
頭からすっぽりかぶったローブ姿ではなく、彼は真新しい黒いスーツを着ていた。見た目だけは人間と全く変わらない。誠実そうな感じの人に見える。
私たちの様子に篠崎さんが声を立てて笑った。
「気づいてなかったか。さては夜、猫の姿で丸くなってたな」
「はい」
「人の姿で安定するにはまだ霊力が戻り切れていないか。まずは安定しないとだな」
篠崎さんは琥珀色の瞳を私へと向ける。
「夜もあんたのこと心配してたよ。あんたに何かあれば、主を失ってまた野良猫だからな」
こくこくと頷く夜さん。
「へへ、心配してくれるイケメンが二人もいるなんて嬉しいですね。うへへ」
「なんだそりゃ」
夜さんはすっかり顔色も耳の毛並みもつややかで、別猫のように落ち着いた様子だ。
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