第1章/猫又男子のお仕事探し

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 「最近の女性はツガイを見つけて繁殖も難しいという。そんな人生を、今なら腕輪で変えられる。お勧めする」 「あ、ああああの…」  ツガイって!? ツガイって何!?  というか、私全く結婚の話とかしてないんだけど。  結婚願望がないわけじゃない。お金だってそりゃああったら安心だ。  けれど私はただ、平凡に生きたいだけ。とかは嫌だ。  それなのに……それすら手に入らないから、悩んでいるだけなのに…… 「え、ええと…私は本当に、お金が無くて……それに、ただ普通に、就職をして、親を安心させて、人生無難に過ごせたらそれでよくて…」 「『井の中の蛙大海を知らず』と古来言う。まずは挑戦だ」 「話聞いてください……」  占い師はずい、と腕輪を見せてくる。  その眼力に飲み込まれてしまいそうだ。  井ノ中楓、井の中の蛙どころか、まさに蛇に睨まれた蛙であります。 「うう……」  私は彼の眼力から逃れようと視線を逸らす。  その時。  旧天神コア前の横断歩道を渡り、大画面を通り抜け、背の高い男性が大股で歩いてきているのが見えた。  遠くからでもひと際目立つ明るい色のスーツに、サラサラのド金髪。  全身から明らかに『その筋の人』というのが伝わる男性だ。
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