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「夜さんなら大丈夫ですよ。私も転職頑張るので、一緒に頑張りましょう」
「ところで」
「はい?」
「主、撫でたいのか?」
しゅるしゅると私の腕に尻尾が絡まってくる。どういった仕組みなのか、ネクタイを締めたのどの奥からごろごろと音が聞こえてきた。
「えっ!? あの、でも……!」
「撫でて欲しい。主の手、気持ちいいから」
目を細めた夜さんは私に頭を差し出してくる。人間の、しかも美男子の姿でだ。
「えええ……」
「あとちょっと舐めさせてほしい」
「!?」
「主、美味しいから……ちょっとだけ」
上目遣いに見上げてくる、その瞳が妖しく輝いている。私はぞくりとした
篠崎さんが契約を結ばないと危ないといった意味がわかった。気がする。
「な? 猫に理性なんざあるわけねえだろ」
「あはは……」
夜さんはそのまま猫の姿になり、私の膝に乗ってきた。まあ猫の姿ならいいやと、膝でごろごろとあやす。
「ところで」
千早駅が見えてきたところで踏切の渋滞に入り、車のスピードが緩やかになる。そのタイミングで篠崎さんは私を見やった。
「どうする? あんたはこのままうちに就職していいだろ?」
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