第1章/猫又男子のお仕事探し

50/59

67人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「夜さんなら大丈夫ですよ。私も転職頑張るので、一緒に頑張りましょう」 「ところで」 「はい?」 「主、撫でたいのか?」  しゅるしゅると私の腕に尻尾が絡まってくる。どういった仕組みなのか、ネクタイを締めたのどの奥からごろごろと音が聞こえてきた。 「えっ!? あの、でも……!」 「撫でて欲しい。主の手、気持ちいいから」  目を細めた夜さんは私に頭を差し出してくる。人間の、しかも美男子の姿でだ。 「えええ……」 「あとちょっと舐めさせてほしい」 「!?」 「主、美味しいから……ちょっとだけ」  上目遣いに見上げてくる、その瞳が妖しく輝いている。私はぞくりとした  篠崎さんが契約を結ばないと危ないといった意味がわかった。気がする。 「な? 猫に理性なんざあるわけねえだろ」 「あはは……」  夜さんはそのまま猫の姿になり、私の膝に乗ってきた。まあ猫の姿ならいいやと、膝でごろごろとあやす。 「ところで」  千早駅が見えてきたところで踏切の渋滞に入り、車のスピードが緩やかになる。そのタイミングで篠崎さんは私を見やった。 「どうする? あんたはこのままうちに就職していいだろ?」
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加