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こうして私の能力を認めて、私を求めてくれる人がいる。
私は――そういう場所に転職したかったんじゃないの?
普通じゃないけれど……ううん。
「篠崎さん」
「ん?」
「この仕事、普通じゃないから嫌だって思ってましたけど、この仕事も普通ですよね」
私は自分の中で確かめるように言う。
「困っている誰かに、生きていくための仕事を見つけたり。得意なことを一緒に探したり。それで誰かが幸せになるなら、そのお手伝いをできるなら、それって素敵な『普通』ですよね……」
「ごく普通の、ごくごく当たり前の仕事さ。あやかしに『普通』を与えるのが、何がおかしい」
踏切が開き、車の流れが動き始める。
ビルの合間から、ぎらりと輝く夕日が目を焼いた。
「――私やります。夜さんに向いてることを力説した私が、自分のできる事や向いてることから目をそらすのって、なんだか違うと思うので」
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