第1章/猫又男子のお仕事探し

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 それから。  私は篠崎さんの経営する『福岡あやかし転職サービス』のいち社員として働くことになった。  敏腕総務の羽犬塚さん。羽が生えた黒柴のお姉さん。  いつも気が付いたらそこにいる営業猫の夜さん。知っての通り、世間知らずな猫又のお兄さん。  そして一人だけ人間の私、井ノ中楓はキャリアカウンセラーとして働いている。 「井ノ中って呼びたくねえから、楓な」  という篠崎さんの命令により、皆さん私の事を楓さん、とか楓殿、とか呼んでくれている。  滅多にない名字だから、友達もだいたいそっちで呼んでくれてたので珍しい反応だと思う。ある日尋ねてみたら、篠崎さんは苦々しい顔をして一言、 「俺は井戸が嫌いなだけだ」  とだけ口にした。よくわからない顔をして首をひねる私に、羽犬塚さんは尻尾を振り振りしながらそっと教えてくれた。 「昔、井戸にまつわることで嫌なことがあったんですって」  柴犬の姿をしたままOLらしい制服を着てパソコンに向かいながら話してくれるので、ただただ可愛らしい。私は篠崎社長を想う。篠崎社長は狐だ。 「落ちて溺れたことでもあるんでしょうかね……」
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