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「さあね、私はそれ以上は考えないようにしているわ。あっ楓ちゃん。雇用契約書、そろそろ試用期間終わるから新しく渡しておくわね」
「恐れ入ります」
社会人になって下の名前で呼ばれるのってなんかくすぐったいけど、この会社ならいいかなって思ってる。
そして従業員だけでなく、社外の『普通』じゃない方々との接点も広がっていった。
時々博多駅から直接移住希望者を連れていく、謎の温泉経営者『徐徐』さんといった商売敵や、絶対名前を明かさないそしてあの篠崎さんも死ぬほど丁重に扱う謎のロマンスグレー『プロフェッサーM』さんなどなど。
最初は慣れなくて大変だった。
それに、辞めた会社の主任が、
「あたしこそ巫女の家系なのよ。あたしがここで働く方がぴったりに決まってるじゃない!」
なんて乗り込んできたりして大変だったけれど、それも楽しい日々。
私の霊力がだだもれの理由も意味もまだ分からないけれど、今はすっかり役に立っている。
普通ってなんだろう。私が欲しかった『普通』って、具体的になんだっけ?
そう思いながら毎日を目まぐるしく送っている。
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