第1章/猫又男子のお仕事探し

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 篠崎社長は屈託なく笑うので、私はついどきりとしてしまう。見た目は柄が悪いのに、時々笑顔がとても屈託ないのがずるいと思う。 「自分亡きあともこの世界にいて欲しいと、かつての主人に請われた」  彼が仰ぎ見る先。綺麗な凹型になった立花山に、綺麗な雲がたなびいていた。 「彼女は恩人だった。そして父を陵ぐほどの霊力を持ち、狐を自在に操る天才だった。ただし時代と立場ゆえに、彼女は博多を離れそして失意のうちに命を落とした。……俺はその人の報いるために生きている」  篠崎社長は掌で缶を弄ぶ。風が、彼のふさふさの耳を撫ぜるように吹き抜けていく。その切なげな横顔に、私は思わずストレートに尋ねたくなった。 「好きな人なんですか?」 「ただの女上司だ!!!」  地雷らしい。ぶわわ、としっぽが大きくなる。  にこにこと笑う笑顔は吹き飛び、今までにない勢いで声を荒げる。 「いいか!? そこを色恋と勘違いしたら首だからな!?」 「は、はい……」  よほどの地雷らしい。私は頷いた。
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