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私が霊力だだもれの女じゃなかったら、きっと彼は私に声をかけなかっただろう。
私は、仮に霊力がだだもれじゃなかったとしても、篠崎さんに、
「使える奴」
だと思ってもらえるような社員でいたい。
きっとそれが、私の胸の苦しさを解決するたった一つの方法だ。
――ひとつだけの、方法。
「ん? なんだ、人の顔ぼーっと見つめて」
「それって何年前の話なんですか?」
「そうだな……400年くらいか」
「え、それって」
「なんだ?」
にやにやと笑う篠崎さんに、私は率直な疑問を突きつけた。
「……篠崎さん、狐さんにしては、寿命長過ぎませんか?」
「いまさらかよ!?!?!?!?」
その時スマートフォンが音を鳴らす。
私はすぐに取った。
「お電話ありがとうございます。こちら『福岡あやかし転職サービス』井ノ中です!」
社長がぽんと無言で肩を叩き、そして飲み干した缶を捨てに行ってくれる。
これからまた忙しくなる。私は気合を入れて、笑顔で電話に対応した。
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