第1章/猫又男子のお仕事探し

6/59

67人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
  鼻筋が通って、ポケットに手を突っ込んで一直線にこちらに歩いてくる姿は強そうで、ガラが悪くて。ああ、あんな人なら絶対こんな占い師に声をかけられないんだろうなあ……と羨ましくなる。  これから歓楽街・中洲にご出勤なのかな。お疲れ様です。  あれ、でも中洲は逆方向――  え、待って。  私のほうギラギラ睨みながら一直線にこっちに来てない!?  気が付けばあっという間に彼は私の目前まで来ていた。 「あ、あの……私はただの……転職活動中のOLで……」  耳ピクピクさせながら、尻尾ぶわーっと大きくしながら、彼はこちらを見下ろしている。  怖い怖い怖い!   もしかして私が仮病使って会社休んだから社長が派遣したの!?  いやまさか! 「え?」    耳? 尻尾???  私は一旦冷静になって、目を擦って彼を改めて確認する。  物騒チンピラ狐さんの頭からは、ゆらゆらと大きな耳が生えている。  そして細身に仕立てたスーツのセンターベンツからは、大きなキツネの尻尾がぶわわ、と大きく飛び出していた。 「き、きつね……?」
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加