第1章/猫又男子のお仕事探し

8/59

67人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「ああ!?」 「あ、あのキツネさん……!」 「なんだ、こいつに金でもとられたか?」 「え、ええと、あの……」  彼は耳を揺らし、私をギロリと見下ろす。可愛いのか怖いのか分からない。 「違うんです。ええと……占い師さんが何かルール違反をしていたのかもしれません、でも、私今、この占い師さんに悩みを聞いてもらって……少しはスッキリした気がするのでどうか、せめて彼には穏便なお話で……」 「ッ!!」 「あ、こら、待ちやがれ!!!」  彼が私に気を取られていたその隙に、占い師は思い切り腕を振り上げ、物騒チンピラ狐さんの手をひっかき、強引に腕から逃れて脱兎のごとく逃げ出した。  新天町の商店街に飛び込まれてしまえば人ごみに紛れ、もう見つけられない。 「ッ!!!! クソ、逃げやがったか……」  物騒チンピラ狐さんはそれ以上追いかけることはなかった。  私は、ふと違和感を覚える。 「……あれ?」  その逃げる占い師さんローブから、変なものがぴょこんと2本飛び出している。  それは二股に分かれた、ぴこぴことした黒猫のしっぽのようで……
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加