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「ね、猫……?」
「ああ。あいつは猫又だ」
あっけにとられた私に、物騒チンピラ狐さんが答えてくれる。
「こうして姉ちゃんみたいな、ぼんくらの悩みや精気を吸い取って生きてやがる」
「は、はあ」
「ボサっとしてるが姉ちゃん、あいつにその腕輪を売られそうになってただろ?」
彼は呆れたように、テーブルの上に並んだパワーストーンを顎で示す。
「それ、あんたに対する目印だ」
「め、目印?」
「簡単に言やぁ、殺されるとこだったぞ」
「ええ!??!?!?!」
パワーストーンから飛びのく私。
物騒チンピラ狐さんは身をかがめ、私に顔を近づけてくる。
よく見たらとんでもない美形だが、それはそうとして、とても怖い。
「あんた巫女かなんかか? んな美味そうな魂ぶら下げて無防備にうろつくな。露出狂」
「え、ええ?! いや……ただのサラリーマンの娘で営業事務ですが……」
彼が言っている事がよくわからない。しかし助けてもらったのは事実。
私は深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
「まあいい、ちょうどよかった」
物騒チンピラ狐さんは腕時計をみて、そして私のトートバッグをひょい、と掴む。
「えっ!?」
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