第1章/猫又男子のお仕事探し

9/59

67人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「ね、猫……?」 「ああ。あいつは猫又だ」  あっけにとられた私に、物騒チンピラ狐さんが答えてくれる。 「こうして姉ちゃんみたいな、ぼんくらの悩みや精気を吸い取って生きてやがる」 「は、はあ」 「ボサっとしてるが姉ちゃん、あいつにその腕輪を売られそうになってただろ?」  彼は呆れたように、テーブルの上に並んだパワーストーンを顎で示す。 「それ、あんたに対する目印だ」 「め、目印?」 「簡単に言やぁ、殺されるとこだったぞ」 「ええ!??!?!?!」  パワーストーンから飛びのく私。  物騒チンピラ狐さんは身をかがめ、私に顔を近づけてくる。  よく見たらとんでもない美形だが、それはそうとして、とても怖い。 「あんた巫女かなんかか? んな美味そうな魂ぶら下げて無防備にうろつくな。露出狂」 「え、ええ?! いや……ただのサラリーマンの娘で営業事務ですが……」  彼が言っている事がよくわからない。しかし助けてもらったのは事実。  私は深々と頭を下げた。 「ありがとうございます」 「まあいい、ちょうどよかった」  物騒チンピラ狐さんは腕時計をみて、そして私のトートバッグをひょい、と掴む。 「えっ!?」
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加