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第1章/猫又男子のお仕事探し
夕暮れの福岡・天神。
学生時代ぶりのリクルートスーツを着込んだまま、私――井ノ中楓は占い師の前で困っていた。
占い師は目の前で、ぎらぎらと輝くパワーストーン・ブレスレットを握りしめて力説する。
「仕事が上手くいかない悩みも、金の心配も、この腕輪をつければ万事解決だ」
「は、はあ……でもお金ないんで」
「金はいらない。これを持って帰ってほしい」
「え、いや、あの……」
「腕輪をつければ、足りなくなった得を補えるし転職できる。霊験あらたかだ」
「あ、あの……」
タダなら貰って帰ればいいじゃない。
そう思わないこともないけど、こんなに力強く必死にパワーストーン・ブレスレットを持ち帰ることを強要されるとちょっと怖い。逃げられない。
そもそも、なぜ私がこんな目に遭っているのかというと。
ブラック企業から転職するべく、天神まで面接に訪れた事から始まる。
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